第2章 アトピー性皮膚炎の真の原因を探る

1.アトピー性皮膚炎の原因となる体の異常状態とは?

これまで述べてきたように、アトピー性皮膚炎が増加してきた背景には、「生活環境の変化」が挙げられます。では、これらの生活環境の変化によって、アトピー性皮膚炎の原因となる「体の異常状態」が私たちの体にどのように引き起こされるのでしょうか? アトピー性皮膚炎の原因について、あとぴナビでは、大きく分けて次に上げる二つを考えています。

一つが肌の問題である「皮膚のバリア機能の低下=角質層の機能低下」、もう一つが体の問題である「免疫機能の異常=アレルギー」です。

アトピーの発症には前述したように、日常のライフスタイルが大きく影響しています。増加するストレス、悪化する自然環境、運動不足、睡眠不足、食品添加物や偏食などの食習慣、化学物質に触れやすい環境(衣・食・住)などあげたらきりがありません。これらを心身に対する負荷と考えたときに、その負荷がその人の恒常性維持機能(ホメオスターシス・体を健康な状態に保つ機能)に支障をきたすレベルに達すると、体にさまざまな異常状態が生じ始めます。それが長く続いたときに生活習慣病といわれる病気が発現します。アトピー性皮膚炎もその例外ではありません。

①皮膚のバリア機能の低下(肌の問題)

まずは、アトピー性皮膚炎の特徴として、皮膚のバリア機能が低下している方が多いという事実があります。

その原因としては、生まれつき肌が弱いという方もいれば、仕事などで化学物質を良く使うために肌が弱くなった方や、日中エアコンなどの人工的に快適な環境下での生活が多くなることで肌を自然に鍛えるような機会が極端に少なくなったために肌が弱くなった方などさまざまです。体の機能は使わなければ衰えます。

皮膚とて例外ではありません。やはり、生活の中で皮膚機能を自然に鍛える環境が減ったことも「皮膚バリア機能の低下」の原因ではないかと考えられます。

皮膚のバリア機能は、角質層の状態で判断できます。角質層は表皮の一番外側にあり、水分保持や外部の刺激から皮膚を守る役割を担っています。そして健全な角質層は、折り重なる角質細胞の間をセラミドなどの細胞間脂質で満たされていて、イメージ的にはサンドイッチの間にたっぷりとバターが塗られているような状態になっています。そうすることで高いバリア機能を保っています。

しかし、最近のデータでは、アトピー性皮膚炎の方はこの角質層のセラミドが健康な方の肌と比較して約30%ほど少ないことがわかっています(アトピー性皮膚炎の方は角質層内におけるセラミド生成機能に支障があることがわかっています)。どうしてそうなるのかについての医学的に断定された原因は特定できていませんが、先ほど述べた日常生活における皮膚に対して継続するマイナス要因が何らかの形でそうさせるのではないかと考えられています。

健康な肌とアトピー肌

②免疫機能の異常(体の問題)

次に、アトピー性皮膚炎のもう一つの原因である「免疫機能の異常=アレルギー」について考えて見ましょう。最近の研究では自律神経系のアンバランスが免疫系にさまざまな悪影響を与えることがわかっています。

自律神経とは体のさまざまな機能を自動調節している神経で、スイッチでいえば「ON」の役割(緊張、興奮、行動)を持つ『交感神経』と「OFF」の役割(リラックス、休息)をもつ『副交感神経』でできています。これらは、人間本来の体内時計、生体リズムによって、働く好ましいタイミングがあります。

例えば、人間は暗くなると眠くなります。これは副交感神経が優位になることを示し、夜眠ることが体にとって好ましいということを示しています。しかし、現在ではテレビ、コンビニ、パソコンなどの24時間生活、昼夜逆転など、本来副交感神経が優位になるべきところで交感神経が優位になることが多くあります。これらと同じ(又は逆)状況が生活習慣の中で多くおきると自律神経系のアンバランスを招きやすくなります。免疫機能

それでは、これら自律神経系のアンバランスが免疫系にどのような影響を与えるのでしょうか?

免疫の働きを持つ白血球には、「顆粒球」と「リンパ球」があり、顆粒球は体内に入ってきた細菌などの異物を取り込んで消化分解する働きがあり、リンパ球はウイルスなど小さすぎて顆粒球には処理できない異物(抗原)を、免疫の力で処理します。 この顆粒球とリンパ球の通常の割合は約60対35ですが、そのバランスが免疫にとっては大切になります。

最近の免疫学の研究では、顆粒球は交感神経が優位のとき、リンパ球は副交感神経が優位のときにそれぞれ増加し、通常の割合を越えて顆粒球が増えすぎると粘膜に炎症を起こしやすくなり、リンパ球が増えすぎるとアレルギーを起こしやすくなることがわかっています。

アトピー性皮膚炎の場合は交感神経優位の状態の方が多く、実際にそのような方の多くには、一進一退を繰り返しやすく、ちょっとした事で傷や炎症が現れやすい状態が見られます。これは粘膜に炎症を起こしやすい顆粒球増の状態をまねいていることも原因の一つと考えられます。 このように自律神経のアンバランスが、アトピー性皮膚炎の症状に深く関わる免疫系にも影響を与えるのです。

これら、免疫機能の異常と皮膚のバリア機能の低下状態が複雑に作用し、アトピー性皮膚炎を発症させていると考えられます。つまり、アレルギーという動力が、皮膚バリア機能の低下と、粘膜に炎症を起こしやすい状況と連動し、さらに負荷として環境因子が加わることで、アトピー性皮膚炎の発症や悪化・慢性化を招いていると考えられます。 では、これらアトピー性皮膚炎の原因をどのように解消してゆけばよいのでしょうか?

2.アトピー性皮膚炎の真の原因を探る

アトピー性皮膚炎の方にアンケートをとった結果があります。(1992年・「全国アトピー友の会」調べ、対象1000名)。

アンケート

この結果から、アトピー性皮膚炎の方にはある共通した身体症状があることがわかります。皮膚症状はもちろんですが、それ以外の共通した体に感じる異常として「冷え、血行不良」、「体温調節異常」、「発汗作用の低下」、「睡眠不足」、「便通異常(便秘・下痢)」、「生理不順」、「ストレス対応力の低下」、「疲れやすい」などが、本人の自覚症状として見られます。

さらに、生活についてのアンケートと照らし合わせてみると、これらの体に対する異常状態を生む背景となった、負担の多い生活習慣が見てとれることが分かります。例えば、薬物依存(ステロイド)、住環境の悪化(化学物質)、食習慣の変化(化学物質、脂質の増加)、転勤や配置転換、受験、人間(家族)関係の悪化、出産、子育て、運動不足、夜更かし、清涼飲料水の多飲など、何らかの生活習慣の関与が容易に想像できます。

だとするならば、アトピー性皮膚炎の方が訴えた体の異常状態は、本人にとって負担の多い生活習慣の積み重ねにより生じた結果であり、その異常状態がアトピー性皮膚炎を体が必要とした原因とも考えられます。実際にアトピー性皮膚炎の方が回復するにつれて、訴えていた体の異常状態(主に自律神経のアンバランス)が消退していくことが確認できます。ここにアトピー性皮膚炎克服のカギがあると言えるでしょう。

赤ちゃんの場合は、本人の生活習慣というわけではなく、お母さんの妊娠中の諸環境(食習慣、喫煙、ストレス、化学物質等)が赤ちゃんの身体機能に悪影響を与えるケースが考えられます。

しかし、むしろこれは発症や悪化の確率を高める要因にはなりますが、発症そのものの原因ではないと考えられます。どちらかといえば出生後の免疫機能の未熟さに原因があるといえます。白血球には細菌を処理する顆粒球と、免疫に関わるリンパ球があり、ストレスや緊張状態で交感神経が優位になりすぎると顆粒球が増え、深いリラックス状態が優位になりすぎるとリンパ球が増えること、そして顆粒球が増えると粘膜などに炎症を起こしやすくなり、リンパ球が増えるとアレルギーを起こしやすくなることについては既に述べました。

出生後はどの赤ちゃんも白血球内の顆粒球とリンパ球のバランスが、出生のストレスで一時的に著しい顆粒球増の状態になります。そうなると粘膜を刺激して炎症が出やすくなります。

しかし、その後すぐに副交感神経優位へと移行します。赤ちゃんが出生後よく眠るのをみてもわかるようにこれから成長するエネルギーを養うために、すぐに副交感神経優位(リラックス状態)→リンパ球優位になるのです。 しかし、赤ちゃんの身体機能(環境適応能力)が低下していたり、赤ちゃんの生活習慣にとってストレスの多い環境下(化学物質、生活リズム、受動喫煙、食を通しての母乳への悪影響など)におかれたりすると、もともとリンパ球が増えてアレルギーが出やすくなっている状況下で、一時的に顆粒球増の状態を招き、そこで炎症が出ることで、これらが複雑に絡み合ってアトピー性皮膚炎が発症、難治化するといわれています。 この段階では、絡んだ原因も複雑ではなく、生活習慣を整えて時間がたてば自然に解けてアトピー性皮膚炎も自然消退できる状況です。

なぜならば、出生後のリンパ球優位の状態は、成長過程の中学生から高校生くらいまで続きますが、それを過ぎると顆粒球とリンパ球のバランスが逆転し、顆粒球増の状態に徐々に変化するので、その時点でアレルギーが自然消退する可能性が高まるからです。

ここに、アレルギー、アトピー性皮膚炎は大きくなったら治るといわれる一つの根拠があります。
リンパ球と顆粒球

しかし、現状はそうではありません。

なぜならステロイド剤やプロトピック軟膏のような免疫に関わる強い薬剤を連続して使用すると、デリケートな赤ちゃんの免疫は人為的に深いダメージを受けることになるからです。そうなると、自然に治るということは難しくなってきます。 昔は、アトピー性皮膚炎に対しては、それら薬剤による対処療法は安全だとされていましたが、最近になってようやく、薬剤がもつ直接の副作用だけでなく、体内の自律神経や内分泌(ホルモン)機能の異常を生じさせることで、本来は成長にしたがって自然に治るはずのアトピー性皮膚炎がかえって治りにくくなることが、指摘されるようになりました。

実際に日本皮膚科学会がアトピー性皮膚炎治療の指針として設けているガイドラインにおいても、薬剤の長期連用による問題点が掲載されるようになりました。

また、小中高生の場合、部活などで体を動かしている人のほうが、動かしていない人と比較してアレルギーが少ない傾向にあるのは、リンパ球優位の状況にあっても、運動などにより随意的に交感神経を刺激する機会が多くなることで顆粒球が増えるために、過度のリンパ球優位の状態が起こりにくくなっているためです。サッカーや水泳などを始めたら喘息やアトピー性皮膚炎が良くなったという話を聞くのはそこに理由があります。

3.薬物療法ではアトピー性皮膚炎を根本的に治せない理由

アトピー性皮膚炎も生活習慣病といわれる病気の一つであることは、前に述べた通りですが、具体的なアトピー性皮膚炎の治し方を述べる前に、先ほど触れた現代医療、特に薬物治療ではなぜアトピー性皮膚炎が治せないのかについて考えてみたいと思います。

まず、アトピー性皮膚炎の主な症状は「かゆみ」や「乾燥」の皮膚症状として現れます。

かゆみや乾燥の原因とそれが伝えるからだのメッセージを理解することが大切

かゆみがおきる原因は、「①アレルゲンによるヒスタミンなどの刺激物質の皮内反応によるもの」と、「②かゆみを感じる神経線維が皮膚表面にまで伸びることで、物理的に外部刺激に過敏になって、かゆみを感じやすくなっている状態」とがあります。

①の場合は、対象となるアレルゲンを避ければ良いと思われがちですが、問題は「身体機能が低下すると、アレルゲンに対する感受性が増し、いつもは反応しないものまで反応してしまったり、反応した際も強く反応が出やすいこと」にあります。体調が悪い、あるいは元気がない、つまり身体機能の低下した状態のときの方が、症状は重くなる傾向にあることはアトピー性皮膚炎の方であれば、一度は経験したことがあるでしょう。

この場合、体は2つの改善を求めていることに気が付かなければいけません。 一つは「アレルゲンを避ける」、二つめは「アレルギーの感受性が高まるような身体機能の慢性的低下を招く、負担の多い生活習慣は改善する」という、生活を変えるように求めてくるメッセージなのです。 かゆみを一時的に抑える薬物治療は、かえってそのメッセージの重要性を希釈することにつながりやすいため、注意が必要といえます。

一つ目のメッセージに対しては、やみくもに薬物で症状を抑えることで、適切なアレルゲン対応の必要性に気がつかず、結果的に症状が長引いたり、さらに症状を抑えるために薬物の使用量が不必要に増えたりすることがあります。また、二つ目のメッセージも同様で、薬物に安易に頼ることで、そのメッセージの意図を理解できなくなり、アトピー性皮膚炎の原因である身体機能の低下を招いた生活習慣の改善を怠ることになりかねません。その結果、アトピー性皮膚炎の原因が解消されなければ、いくら薬剤で症状を抑えても、体はいつまでも症状を出し続けようとしますから、徐々に慢性化、薬剤でさらに症状を押さえざるを得ないという悪循環に陥る危険性があります。

当然、ステロイド剤やプロトピック軟膏の使用が長期化するということは、薬剤そのものが持つ副作用の影響を受ける危険性も、使用期間に比例して高まることになります。事実、そのケースは数多く確認できますし、それが社会的な問題を生み、いまだステロイド剤やプロトピック軟膏の長期使用によるダメージから抜け切れずに苦しむ人が後を絶ちません。

次に②に関しても同じことが言えます。

最近では、かゆみのメカニズムに関する研究がかなり進んできました。例えば、昔は皮膚表面においてかゆみを知覚するのは痛点(痛みを感じる点)だと考えられてきました。しかし、最近の研究では、かゆみを知覚するメカニズムにおいて痛点は関係しておらず、あくまで、かゆみを知覚する神経が関わっていることが分かったのです。 そして、その最新の研究で、アトピー性皮膚炎においても度々確認できる「薬物では制御できないかゆみ」についてのメカニズムが明らかになり、このメカニズムによるかゆみがアトピー性皮膚炎の方に多いということがわかってきたのです。 それによると、アトピー性皮膚炎の方の肌の多くはかゆみを伝える神経線維が、本来あるべきはずの真皮の境界線を越え、表皮の角層直下の部分まで伸びているため、外部からのちょっとした刺激にも敏感にかゆみの神経が反応して、容易にかゆみを感じてしまうことが発見されました。

健康成人とドライスキンの皮膚

これがどう意味合いを持つのかというと、外部からの刺激に物理的に反応しやすくなっていることが原因である以上、この種のかゆみに対しては現在使われている炎症を抑えるための薬物使用があまり意味を持たないことを示しているのです。もちろん、薬剤を使用することでかゆみより生じた炎症は緩和されますが、外部からの刺激という物理的な原因を排除しない限り、炎症は繰り返して生じることになります。

このことを知らないでいると、炎症を抑えるための薬物を慢性的に使用することになり、薬剤が持つ副作用などで悪化することになりかねません。 このかゆみを感じる神経線維は、皮膚の水分量が低下してくる(乾燥肌の状態)と伸びることがわかっています。 これは表皮にあるケラチナサイトという細胞からでる神経成長因子(NGF)が増え、神経線維が伸びるためです。アトピー肌は皮膚のバリア機能が破壊され、外部刺激が伝わりやすくなっていることに加え、乾燥によりかゆみを知覚させる神経線維が伸びることで、刺激に対するかゆみの感受性が非常に高まり、結果的に慢性的な皮膚症状の悪化へとつながりやすくなります。

なお、このかゆみの神経線維が伸びた状態を元に戻すためには、正しいスキンケアで皮膚のバリア機能を回復させ、水分量を増やすことが必要であることがわかっています。

そして、ここにも二つの重要なメッセージがあります。

一つ目は「この原因で起こるかゆみに対しては薬物使用は意味がない、むしろ副作用による症状の悪化などの危険性が高い」ということです。二つ目は「皮膚のバリア機能を回復させ、水分量を増すための継続したスキンケアや根本的に肌の潤いを取り戻す新陳代謝や発汗作用を促進するような改善が必要である」ということです。 従って、安易な薬物使用は効果がないばかりか、かえって症状を悪化させる原因となる場合があることを知っておく必要があるでしょう。

つまり、現代医療における薬物治療とは、何らかの原因により生じた体の不快な状態・症状を改善するためのもので(対症療法)、原因そのものを改善し、根本的に治すもの(根本療法)ではないということです。薬剤で症状を抑えることは一時的な擬似治癒状況を生むに過ぎず、その擬似治癒状況の間でアトピー性皮膚炎の原因が解消されていなければ、もちろん症状は再燃することになります。

アトピー性皮膚炎に対する薬物の問題点は、このように、症状が抑えられることで本来改善すべき原因に目を向けさせなくしてしまい、原因が解消されないことによる症状の再燃に対していつの間にか薬剤の長期連用を行い、薬剤が持つ副作用の影響を受けてしまっていた、ということにあるのです。

4.アトピー性皮膚炎の真の原因について理解する

アトピー性皮膚炎の原因を理解し、それに対する改善策を考えれば、理想的な治療方法が見えてきます。 アトピー性皮膚炎には、個人ごとにさまざまな原因が考えられ、全員に必ず見られる原因というのはありませんが、逆に一部の人に共通した「原因群」という傾向は見られます。ここでは、その原因群について、見ていきましょう。

■アトピー性皮膚炎 発症・悪化の原因

①遺伝的要素

②外的環境
・アレルゲン(ダニ・ホコリ・花粉・その他)
・化学物質(衣・食・住)
・生活習慣(睡眠・運動・食事)

③体内環境
・自律神経のアンバランス
・免疫系のアンバランス
・内分泌系(ホルモン)のアンバランス
・血行不良
・新陳代謝の低下
・体温調節不良
・皮膚のバリア機能(水分・皮脂膜・角質層)の低下

④その他
・精神的ストレス
・薬物依存

■ 遺伝的要素

あくまで遺伝は原因の一つであって決定的な要因ではありません。片親にアレルギー体質があると約3割、両親にあると7割の子供にアレルギー症状が現れるという報告がありますが、両親共にアレルギー体質がない場合でも約2割の子供は発症することが分かっています。さらに、両親にアレルギーがあっても約3割は発症していません。
たとえアトピー性皮膚炎と診断されても26Pで述べたように、ステロイドの漫然とした継続使用や身体機能に異常を与える生活習慣などにより、免疫系や肌のバリア機能に深いダメージを与えることをしなければ、ほとんどのアトピー性皮膚炎の子供は、成長と共に自然とその症状が軽減するか消退するので、心配はいりません。
また、妊娠中の母親が、食事やライフスタイルに気をつけることで、子供のアレルギーの出現の割合が減ることが知られています。食物アレルギーなどがある場合も、成長して腸管免疫が整う頃になると食べれることも多いので、余り心配することはないといえます。 アレルギー体質は遺伝的な要素が関与しますが、アレルギー体質=アトピー性皮膚炎ではありません。

よく勘違いしている人がいますが、アレルギー疾患が起きない=アレルギー体質がない、というわけではありません。睡眠不足で目の周りに隈ができるのもアレルギー症状です。誤って傷んだ食べ物を食べて下痢が起きるのも、異物を排泄するために体が引き起こしたアレルギー症状なのです。

アレルギー体質は、それらのアレルギー症状が出やすいかどうかの違いをもたらすだけであって、アレルギー症状が出るか出ないかを決める要因ではないのです。同時に必要なときにアレルギーが起きない体質は非常に危険であることは言うまでもありません。傷んだ食べ物を食べたときに下痢が起きないことの危険性は理解できるでしょう。

アレルギーはもともと誰もが生まれながらに持つ生体防衛機能の一つなのです。したがってアレルギーそのものが悪いというわけではなく、体にとって無害なレベルのものに対してまでも過敏に反応してしまう本来のものからはズレた体のシステム(ズレたアレルギー反応)が問題なのだと捉えるべきです。
このようにアトピー性皮膚炎が発症する、あるいは悪化する原因は、生活環境などにあるわけですから、遺伝的要素はアトピー性皮膚炎の「要因」の一つであって「原因」ではありません。 したがって「どうせ遺伝だから」などと諦める必要は全くありません。

■ 外的環境

ここでいう外的環境とは、アトピー性皮膚炎を引き起こす、または悪化させることがわかっている環境のことで、個々人によって異なりますが、それらを明確に理解して、できる範囲で改善することが大切であると言えます。

【アレルゲン】

アレルゲンを突き止める検査にRAST検査があります。 RAST検査において強く反応したり、経験的に特定のアレルゲンで悪化することがわかっている場合は、特定されたアレルゲンを極力避ける環境を整えることが、スムーズな回復には大切といえます。 例えば、ダニやホコリの場合はこまめに掃除をする、牛乳の場合は、牛乳で得られる栄養素を他の食品で補うようにするなど、各自で工夫するとよいでしょう。

時々、アレルゲン除去を徹底しすぎて、かえってストレスで精神的に不安定になる方がいますが、掃除で言えば、通常の掃除程度の除去で充分です。大切なことは、同じ環境にいても症状の出ている方と出ていない方がいる以上、体の諸機能を異常状態から正常状態に改善し、それら(アレルゲン)に過敏反応しない体にすることが大切だということです。

【微量化学物質】

化学物質は、現在の私たちの身の回りにあふれています。
大気中には排気ガス、水道水、食べ物、衣類、住空間、ありとあらゆるところで化学物質は存在します。大気も海水も循環している以上、現在の地球上において、化学物質の影響を完全に受けない生活が行えるところはもはや存在しないと言えるでしょう。 もちろん化学物質が必ず何らかの悪影響を与えるわけではありません。しかし、微量な化学物質であってもそれが蓄積することで、時間の経過とともに悪影響を現わす場合もあります。

そして、人間はこの化学物質に対して、アレルギー症状という警報装置を備えているのです。 マウスを使った実験によれば、大量の化学物質を与えるとマウスは中毒症状を起こして死に至ります。ところが極微量の化学物質を継続して与えると、アレルギー症状を現わすことが分かっています。つまり、化学物質が体に悪影響を与える前に、それを知らしめる警告手段としてアレルギーがあるというわけです。実際、ヒトにおいても、ごく微量な化学物質に反応し通常の生活に支障が起きる化学物質化敏症という病気があります。

そして、アトピー性皮膚炎の場合も、その症状を悪化させる要因の一つが、この化学物質であるといってよいでしょう。人によっては、アトピー性皮膚炎を発症させた原因として認識されていることもあるようです。 身の回りの原因物質例えば、新築の家や新車に高濃度に見られるホルムアルデヒトや、トイレの芳香剤に含まれるパラジクロロベンゼンなどは、化学物質化敏症を引き起こす原因物質としては有名ですが、アトピー性皮膚炎の症状が悪化している時期の人がそれらに接すると、症状がさらに悪化することがあります。また、シロアリ駆除剤などは、アトピー性皮膚炎の方がほぼ例外なく悪化しますので、注意が必要です。 引越しや転勤なども、化学物質に接する機会が増えるきっかけです。室内環境が大きく変わった際の悪化や発症には、この化学物質が影響していることが考えられます。

また、アトピー性皮膚炎の方は洗濯洗剤による衣類(特に下着)への残留界面活性剤も気をつけなければなりません。 某大手メーカーの残留界面活性剤の調査では、現在市販されている洗濯機では、何度すすぎを繰り返しても、3回程度で軽減される限度をむかえ、300PPMほどの洗剤は衣類に残留してしまいます。 この残留した界面活性剤はもともと水と油を混ぜる作用がありますので、汗や皮脂と反応して混ざり合い皮膚から体内に侵入することになります。特にアトピー性皮膚炎の方は皮膚バリアの機能が低下している方が多いので、その害は深刻です。そうした界面活性剤は皮膚に対して刺激になるだけでなく、肝機能、腎機能に負担をかけたり、ホルモンバランスを乱したり、免疫を過剰に刺激することで化学物質過敏症の原因物質になったりすると考えられています。

特に乳幼児や汗をかきやすい季節は重曹洗剤などの完全に界面活性剤を使用していない洗剤に変えるなど気をつけてください。 改善策としては、まずそれらの「化学物質との接触を極力さける」ことと、「体の新陳代謝(特に発汗作用)を高める」ことが有効だとされています。

洗濯とすすぎ

【生活習慣】

これは、「体に負担になる生活習慣を改善する」ということです。簡単に言うと「1日の疲れは1日で取る習慣」ということでもあり、その基本は睡眠、運動(活動)、食事です。

睡眠

アトピー性皮膚炎の方の場合、症状が悪化している時期は、夜眠れないことが多いようですが、それでもできる限り夜眠る(体を休める)習慣はつけたほうが良いでしょう。

かゆみや炎症などの症状で眠れないのは仕方ありませんが、アンケートをとると睡眠時間が少ないと答えた方の中には、ゲームやパソコン、テレビ、読書、遊びといったものが、その原因としてかなりの割合でありました。これは当然、改善すべき生活習慣に当たると言えます。 自然界には全てリズムがあります。そして、その自然界のリズムに合わせて人間の体にも「生体リズム」と呼ばれるリズムがあり、1日のリズム、1ヶ月のリズム、季節のリズムに沿って体は無理なく動いているのです。

例えば、皮膚の再生は夜中の12時から2時の間がピークで、睡眠中に活発になることがわかっています。これはこの時間に寝ている方(少なくとも体が休まる状態)が健康な皮膚を作るという点で良いということを示しており、よく睡眠不足が原因で肌が荒れたと訴える女性が多いことをみてもうなずけるでしょう。

また、アトピー性皮膚炎の炎症に関わる副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)は、午前4時頃から活発に分泌し始めます。逆に夕方から夜にかけては低下し、これは昼型の生活が体に負担のないことを示しています。 このような生体リズムにそった生活は、体への負担が少なく、自らの自然治癒力を高める格好の環境となります。スムーズなアトピー性皮膚炎克服のためには、日常生活においても常に意識したい事項といえるでしょう。

運動

「人間の体は適切に使えば使うほど強くなる」といわれています。
これは、ある程度の年齢の方であればさまざまな局面で実感することでしょう。例えば、アトピー性皮膚炎の方の場合、症状の関係で運動が出来なくなったり、外出が減ったりすると、その体を動かす機会が減った影響は、筋力の低下・体力の低下になって現れます。 また、温度変化に弱い方は、知らず知らずのうちに空調の効いたところでの生活をしがちになりますが、そうすると、発汗作用をはじめ体温調節機能は低下します。体温調節機能の低下は最大の環境適応力の低下であり、体にとっては負担が大きい障害です。この機能が低下しても生きていられるのは人間だけのことで、他の動物の場合は生命の危機となるような障害であることを忘れてはいけないでしょう。

アトピー性皮膚炎の場合、血行不良、手足の冷え、発汗作用の低下が見られる方が多いのですが、体に冷えを感じることは、血行不良を示し、これは同時に新陳代謝の低下を招き、最終的には体全体の機能低下を招くことになります。 そして「いくら体を温めてもすぐに冷えてくる」と訴える方も多いのですが、その方々の多くに「筋力低下」の傾向が見られます。

心臓から出た暖かい血液は全身をめぐりますが、こぶし大の心臓の収縮だけで血液が体中を回るわけではありません、体にはもう一つの心臓があるといわれており、それが筋肉です。例えば、腕をポパイのように曲げて伸ばしてみると、筋肉がポンプであることが自覚できるでしょう。体中の筋肉(ポンプ)は動くことで働き、その力を強めます。アトピー性皮膚炎克服の要素には、「血流」を常に良い状態に保つということがありますが、適切な運動が必要な理由はこのためなのです。

食事

食事については、さまざまなこだわりをもった個々人の方法があると思いますが、アトピー性皮膚炎を克服していく上で必要な要素としては、「安全な食材、旬の食材で作る、ある程度健康に気を使った家庭料理」といったところに気をつければ充分でしょう。 もちろんアレルゲンがわかっており、明らかに悪化原因となる経験があるものに関しては、極力避けたほうが良いのは言うまでもありません。

なお、食事に困るほど多種の食材に対し食物アレルギーがあるケースは子供に多く、そのほとんどが乳幼児ですが、成長に伴い腸管免疫が整うと食べられるようになる場合がほとんどです。最初は生ものは避けて、火を通したものを中心に、少量から徐々に慣らしていくことで摂取ができるようになったケースも数多くあります。 安全な食材とはできるだけオーガニックのものが望ましいといえますが、一般市場で手に入るオーガニック食材は高価ですし、本当に良いオーガニック食材は手に入りにくい現状から言うと、野菜やお米、調味料など全ての食材をオーガニックにすることは難しいでしょう。しかし、食の安全性は、必ずオーガニックの食材をとることだけでしか得られないものではありません。その安全性を合格ラインで確保する方法があります。それは「調味料と主食(米)だけは安全なものを使用する」ことです。

年間、食事を通して体内に入る化学物質(食品添加物・保存料・着色料など)の量は2キログラムといわれています。2キログラムといえば2リットルのペットボトルの量ですが、その量が体内で与える体への負担は言うまでもありません。 特にアトピー性皮膚炎の方は新陳代謝や排毒作用(デトックス作用)が低下しているので注意が必要です。 また、パン食が多くなった現在でも、いまだお米が主食であることには変わりがありません。主食として一番継続して食べる総量が多い食材ですから、安全性には気をつけたいものです。そして、成人の場合には、無農薬米などの安全性が確保できていることが条件ですが、できれば精白米よりも未精製米の方が、ミネラルや食物繊維などの面を考えると良いでしょう。ただし乳幼児の場合は、未精製米は腸管に負担を与えやすいため、玄米の状態ではなくできる限りぶづきにして摂取した方が良いでしょう。

その他、おやつやジャンクフードを食べて食事がおろそかになる方もいますが、その場合、アトピー性皮膚炎は治りにくい傾向が見られます。 例えば、甘いものの摂り過ぎは皮膚の代謝を阻害する傾向がありますし、食べ過ぎもよくありません。ジャンクフードは、油や化学調味料を多く使っており、保存剤や人工着色料なども多く含まれている傾向にあります。それらの脂質や化学物質の影響も無視できないものがあります。できる限り、自然の食材を生かした手作りの食事が理想といえます。

なお、最近ではサプリメントも話題に上がることが増えてきました。サプリメントは個々の食事情、症状の状態、ライフスタイルに合わせて、必要であれば最小限で補うことは、効果的です。特に野菜など素材そのものの栄養素が数分の一に減少しているといわれている最近の食事情では、普通の食事では効果的な栄養素が補給できていない可能性も否定しきれません。ただし、食事の基本は、日常の「食」であって、サプリメントはあくまでも補助と位置づけて有効活用するべきだといえます。

■ 体内環境


改善すべき体内環境とは、アトピー性皮膚炎の方が訴える体の異常状態であり、かゆみ、炎症というアトピー性皮膚炎の症状の原因となるものです。

アトピー性皮膚炎の回復経過をみると、これらの異常状態の改善とアトピー性皮膚炎の症状改善が比例関係にあることから、何らかの効果的な方法でこの体の異常状態を正すことがアトピー性皮膚炎克服には不可欠だといえます。 ある意味、自分の周りの環境に対する適応能力(ホメオスターシス=恒常性)の低下が、体を必要以上に過敏にさせ、アレルギーという防衛システムを働かせるわけですから、外的環境と体内環境のある程度のバランスの取れた改善ができれば、アトピー性皮膚炎は消退するといえます。 また、これらの改善は「自らの体を自らが治す絶妙なシステムの改善」である以上、できるだけナチュラルで、体に負担のない優しい方法で行うべきでしょう。

この改善を、ホルモン剤や免疫機能にダイレクトに働きかけるような薬剤の使用に頼ることは、前に述べたように、最善の手段とは言えません。まして原因を解決していない薬剤の治療は、相応のリスクを秘めている以上、常にアトピー性皮膚炎治療の第一選択肢となるわけではないことを理解しておくべきでしょう。これは、デリケートな精密機械の修理に、トンカチやノコギリが必要ないのと同じです。

【自律神経・免疫系・内分泌系のアンバランス】

具体的な自覚症状としては「体温調節がしにくい」、「冷え・ほてり」、「汗をかきにくい」、「生理不順」、「睡眠がとりにくい」、「昼夜逆転」、「疲れやすい」などがあげられます。

自然治癒力は、主に「自律神経系」、「免疫系」、「内分泌系」の絶妙なバランスの上に成り立っていますが、これらのバランスが崩れたとき、環境適応能力は低下し、それらが続くと体の異常状態を生んで、さまざまな病気の原因となります。

生活習慣病などが代表的な例ですが、アトピー性皮膚炎もその一つです。 アトピー性皮膚炎の方に生じる自律神経のアンバランスが原因で起こる症状に、「体温調節がしにくい」ということがあります。暑くもないのに暑がってみたり、寒くもないのに寒がってみたりといったことが起きます。 これは自律神経が体温調整に関わる血管の収縮機能をつかさどる神経だからです。自律神経には緊張したときに働く交感神経(ON、血管収縮)とリラックスしているときに働く副交感神経(OFF、血管拡張)がありますが、生活の中で慢性的にこのバランスが崩れると自律神経にも悪影響を与えることになります。

また、ステロイド剤を継続して使用すると、交感神経優位の状態による自律神経のアンバランスが起きやすいことが分かっています。これらの悪影響から慢性的な血管収縮状態による血流不良が起き、新陳代謝低下(発汗作用の低下)を招き、体温調節機能へも支障がでるのです。体温調節がままならない=正常な新陳代謝を行えない状況であるとも言えますから、体内の異常状態としては深刻な問題につながってくることは言うまでもありません。 これらの異常状態を生む背景にはそれらを生む生活習慣が見て取れます。

まずはその原因となった生活習慣を明確に把握し、改善することが大切ですが、なかなかそれだけでは、乱れたこの状態を効果的に改善することは難しいものです。効果的に改善していくためには、これらの異常を抱えた身体機能を正常に導き、同時にバランスを整える、なんらかの体に優しい具体的なアプローチを平行して行う必要があります。

【血流不良・新陳代謝の低下】

具体的な自覚症状としては「冷え、ほてり」、「肌色が悪い」、「肌が乾燥しやすい」、「吹き出物が多い」、「汗をかかない」「体温調節がしにくい」、「便秘・下痢」「傷が治りにくい」などがあげられます。

血流は、栄養成分の供給と老廃物の排除という生命の基本的な機能(新陳代謝)を担っています。つまり血液循環が良いことが、自律神経・免疫系・内分泌系の自然治癒システムを効果的に働かせることにつながります。また、そうなることで血液の潤滑油としての役割が正常に機能していることを示しています。ダメージを受けた皮膚組織においても、常に新しい健康な血液が運ばれてくること(皮膚組織の新陳代謝がよいこと)は、その再生能力に大きなプラスの影響を与えることが容易に理解できるでしょう。

血流障害が起きる原因としては、体に負担をかけている生活習慣が原因の場合もありますが、注意しなければならないのは、ステロイド剤などの継続した薬物使用が皮膚表面の血流不良を起こすことにあります。これは正常な皮膚の再生に支障を与えると同時に、皮膚のバリア機能を低下させることがわかっています。

また、体内で作られる副腎皮質ホルモン(ステロイド)は糖代謝やストレス対応などの生命維持に深く関与しているホルモンなので、人工的なステロイドが体内に入ってくるとそのバランスが崩れ、体全体にも大きなダメージとなることがあります。そして、内分泌系の微妙なバランス異常が自然治癒力のもう一つの要素である自律神経にも悪影響を与え、その結果、血液循環を悪化させることがありますから注意が必要でしょう。 新陳代謝の低下で顕著なものとしては「汗をかかない」、「便秘」があげられます(発汗については詳しく後述しますのでここでは省略します)

まず、「便秘」ですが、とにかく多くのアトピー性皮膚炎の方に見られる症状です。「便秘」といってもその回数はまちまちで2日に1回の方もいれば5日~1週間で1度という信じられない方もいます。アトピー性皮膚炎全体で見ると、、正常であれば1日に最低でも1回は便通があることを考えた場合、「便秘」と考えられる人の数は多いといえるでしょう。便秘が体に悪いことは誰しも知っていることですが、アトピー性皮膚炎においては、便秘をすると腸内でヒスタミンという物質ができることで「かゆみ」を誘発させる原因となることがあります。 その原因は、運動不足や脂質の多い食生活を含めた生活習慣に由来することが多いのですが、意外なところで喫煙、しかもヘビースモーカーに多い傾向があります。

これは、喫煙が毛細血管を始めとする血管を収縮させることを原因としていますが、アトピー性皮膚炎の方はヘビースモーカーにはならないように注意をしてほしいものです。 これらの血流不良や新陳代謝を効果的に改善するならば、日ごろの生活の改善に加え、入浴や運動(主に有酸素運動)で全身の新陳代謝を高める習慣(常に体を冷やさない習慣)をつけることが大切です。

【皮膚のバリア機能の低下】

皮膚のバリア機能の低下とは、表皮の皮脂膜、角質層のトラブル状態を指します。

バリア機能は外部からの刺激に対して皮膚を守る働きがあるのと同時に、潤いと張りのある肌、皮膚に蓄えた水分などを逃さない役割があります。アトピー性皮膚炎の方はこの皮膚のバリア機能が弱いことが分かっています。

表皮の表面にある角質層は、角質細胞がレンガのように重なり合って、その間はセラミドを主成分とする「角質細胞間脂質」という脂質によって満たされています。角質細胞間脂質は、水を吸着する力が強く、油にも混ざりやすい性質を持っていて、それらが充分に作用していれば水分、油分ともに、適当に保持されます。そして皮膚はしっとりきめ細やかに保たれ、一つ一つの角質細胞同士が強固なつながりを持ち、バリア機能の役割も充分に果たします。また、皮脂膜は、皮脂腺から出る皮脂と汗が乳化して一番外側にラップのような薄い膜を作ります。この皮脂膜は、水分の蒸発を防ぐだけでなく、外部の刺激から皮膚を保護し、弱酸性のため細菌の繁殖を防ぎ、皮膚の表面に潤いとツヤを与えます。

このように「皮脂膜」、「角質層」に関わる機能を正常化させることで、皮膚のバリア機能の低下を改善することもアトピー性皮膚炎の克服には重要となります。

皮膚のバリアー機能

要注意!皮膚のバリア機能の低下による自覚症状
●ぽろぽろ皮膚がむける、粉をふいたようになる。

角質層のセラミドなどの細胞間脂質が不足しているため、角質細胞がはがれやすくなっており、皮脂膜の形成も不十分なために起こります。服を脱ぐと白いふけのようなものがたくさん落ち、更にバリア機能の低下が進むとその皮膚のむける量は相当な量になることもあります。改善策は、皮膚の血流及び新陳代謝の改善と角質層へのセラミドの補給と、保水・保湿・保護を基本とした適切なスキンケアです。

●掻き傷ができやすい、感染症にかかりやすい

健全な角質層、皮脂膜の形成が不十分なので、さまざまな外部の刺激に弱くなっていることがあります。例えば、細菌やウイルスなどが原因で感染症に悩まされたり、皮膚に掻き傷ができやすいのは、バリア機能が低下しているためです。それに加えて真皮と表皮の境界線を越えて、角質層にまで伸びているかゆみを感じる神経線維へ外部からの刺激がダイレクトに伝わるため、不必要にかゆみを感じやすくなっていることがさらに悪化の方向に働きかけます。改善策は、肌の潤いを戻すことで異常に伸びたかゆみの神経線維は元の状態に戻ることがわかっていますから、身体機能の改善ともに皮膚の血流及び新陳代謝の改善と角質層へのセラミド補給と、保水・保湿・保護を基本とした適切なスキンケアを行うことが有効です。

●その他の自覚症状

「お風呂上りにすぐ乾燥し始める」、「入浴中、皮膚をむかないと皮を一枚かぶったようで気がすまない」「肌の血色が悪い」、「気温の変化に弱い」、「汗をかきにくい(汗が刺激になりかゆい)」などを感じたら、皮膚のバリア機能が低下した状態と考えられます。

■ その他
【精神的ストレス】

ストレスは多かれ少なかれ誰にでも存在します。また、良いストレスもあれば悪いストレスもあります。さらに同じストレスでも、個人差があり、人生の局面によってもその意味は違ってきます。 そして、精神的なものが、症状に与える影響については誰しも経験したことがあるでしょう。

例えば、何かに没頭しているとき(充実感のあるとき)はかゆみなど感じない、逆に、いらいらしたりするとかゆみを敏感に感じるなどは良く耳にする話です。ストレスが疾患に影響を与えるのはアトピー性皮膚炎だけに限るわけではありません。胃潰瘍や高血圧なども、ストレスが症状に影響を与えていることは良く知られた話です。これらからも、間違いなく心と体には密接な関係があることがわかります。

そして、マイナスのストレス、つまり症状の悪化や長期化につながると思われるストレスに関しては、うまくその害が出ないように回避したいものです。また逆も真なりで、「良いストレス」は症状を改善させる力を持つことも忘れてはなりません。 アトピー性皮膚炎の場合、炎症を押さえるためにステロイド剤を治療として使用することが多いですが、もともと体内で作られているステロイド(副腎皮質ホルモン)はいくつかの重要な作用があります。生理作用としては糖質代謝と、ストレス対応作用があり、薬理作用としては抗炎症作用があります。この抗炎症作用という薬理作用を利用して、アトピー性皮膚炎の炎症を抑えるのがステロイド剤の働きです。

このように、ストレスが多い生活を続けていると、体内で作られる副腎皮質ホルモンの作用は生理作用であるストレス対応を優先して使われてしまい、二次的な働きとなる薬理作用(抗炎症作用)まで回らない状態が起きます。これが、慢性的にストレスが多いとアトピー性皮膚炎が治りにくい原因の一つといえるでしょう(同様の理由で糖分の取りすぎにも注意が必要です)。 また、ステロイド剤の継続した使用は、自律神経、免疫系はもちろんのこと、正常なステロイド(副腎皮質ホルモン)の分泌(内分泌系)にも悪影響を与えますので、生体自身のストレス対応力の低下を招くため注意が必要です。

ステロイド剤を長期連用し、副作用の影響が見られる人には、ストレスにうまく対応できない鬱傾向の方を見受けることがありますが、これも、このことが原因とされています。したがって、成長期の子供に対するステロイド剤の使用には、十分に気をつけるべきでしょう。 実際に、ステロイド剤の長期使用者の方に行ってもらった自律神経自己判断テスト(安部法・CIM判定)の結果では、「ちょっとしたことでも気になって仕方ないですか」、「すぐカーッとなったりいらいらしますか」、「ちょっとしたことで癇にさわって腹がたちますか」、「急な物音で飛び上がるように驚きますか」などにチェックをする交感神経の過剰優位と思われる方が多い傾向にあります。

さて、アトピー性皮膚炎の方で、ストレスが原因と思われる悪化や長期化の事例を調べると、その大多数は人間関係によるもので、「家族関係」と「それ以外の人間関係」との2つに大別できます。

家族関係において代表的なのは、「親(家族)が自分の病気で悩んでいる姿にいつも悲しくなる」、「親(家族)が次から次へと治療法を勧める」、「病気の辛さを理解してくれない、気迫や頑張りが足りないと思われていて、いつもそういわれ惨めに感じる」、「アトピー性皮膚炎であることを常に気にするような発言をする」などです。これらがどうして本人に負担となっているかについての説明は不要でしょう。家族だからこそ感じるストレスは、他のストレスに比べて、毎日接しているだけに本人への負担度は大きいことが多いものです。

また、「その他の人間関係」においては会社関係、学校関係が主ですが、これは考え方や家族の方針を変えたりすることである程度改善ができます。 人間関係には、それぞれの座標があります。自分が何処にいて、親が何処にいて、友人が何処にいて、同僚・上司・先生が何処にいるのかという、いわばそれら座標点の位置関係から生まれる影響の与え方が「ストレス」といえるでしょう。家族関係が動かしがたい座標点であることを考えると解決の難しさが理解できます。

そのような時は、可能であれば療養目的で湯治場を利用することで家族との距離を少しとってみる(座標位置を少し変える)ことも効果的です。アトピー性皮膚炎を患っている自分自身に向き合い、認め、前に進んでいくためには、自分自身にとって理想的な時間と空間に身をおくことも効果的でしょう。

【薬物依存からの脱却】

薬物は、急性疾患のように原因がはっきりしている病気に対して使用することは意味もあり効果的ですが、慢性疾患のように原因がはっきりしない病気に対して長期連用して薬物を使用することは、人間本来の自然治癒力を最終的に低下させるリスクがあることを使用する際には認識した方がよいでしょう。

例えば、細菌やウイルスの感染症にかかった時に、適時に抗生物質や抗ウイルス剤を使用することは、不必要な体力低下を招かないで、自然治癒力が発動できる機能と動力を確保する意味においては意味があります。 しかし、体質改善と称して薬物を使用することはあまり意味がありません。なぜなら体質とは「良くも悪くも今までの生活習慣が根付くことで作られる」からです。さまざまな原因が絡み合って今の体質を作っているのですから、これは生活習慣を変えていくことでしか根本的な改善は望めないと考えるべきでしょう。

冒頭で述べたように、人間には生まれながらに自分の体を自分で治すシステム―自然治癒力―が備わっています。いかなる治療もそれを最大限活かす方向で行わなければなりません。かゆみ、炎症を発現させている体の構図(アトピー性皮膚炎に対して自然治癒力がうまく働かない構図)に焦点を当て、それを改善することが大切です。

そして、現在、アトピー性皮膚炎の治療の主体として病院で行われているステロイド剤やプロトピック軟膏による治療は、本当にアトピー性皮膚炎治療の主体として必要なのかを考える時期に来ているのではないでしょうか? もちろん、薬剤そのものに意味がないということではありません。しかし、原因を解決していないにも関わらず、アトピー性皮膚炎そのものを治しているという誤解を与えながら、使用されることが多い現状は、本来アトピー性皮膚炎克服に必要な生活の改善の必要性に気づく機会を失わせており、それらの薬剤でしか症状を抑えきれない必然性がある場合を除いては、そのリスクを考えた場合に、必ずしもアトピー性皮膚炎治療のファーストアプローチでなくても良いのではないでしょうか?

ここで、アトピー性皮膚炎に対して最近の使用者からの深刻な相談が多いプロトピック軟膏使用に関する情報を紹介しましょう。

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[column1] 
あとぴナビ2006年3月号掲載「ドクターQ&A」


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アトピー性皮膚炎のため、顔全体に赤みがあるので、皮膚科でプロトピック軟膏を勧められました。副作用はほとんどないという説明を受けましたが、大丈夫でしょうか?

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人体への副作用については医学的に証明されていませんが、 感染症のリスクやリバウンドを起こす可能性もあるので 使用前のセカンドオピニオンをおすすめします  

プロトピック軟膏(※1)をはじめとするタクロリムス含有剤は、もともと臓器移植患者の拒否反応を抑制する薬で、免疫抑制剤と呼ばれるものです。それがアトピー性皮膚炎(以下アトピーと略します)の炎症を抑える効果があるということで、使用されている場合が多いお薬です。初めは成人のみの使用しか認められていませんでしたが、数年前から幼児への使用も認可されました。アトピーでは通常、軟膏が用いられます。  

ご質問は、タクロリムス含有剤の副作用に関してですが、医学的にはまだ副作用は証明されていません。しかし、とてもリスクの多い薬であることは事実です。  

臓器移植患者への経口投与においては、日本でもリンパ腫を発症して亡くなったお子さんがいます。ただし、移植後の免疫抑制剤投与は必要なことですから、危険があっても仕方ない一面があります。しかし、アトピー性皮膚炎の治療では、わざわざ危険を冒す必要があるでしょうか。内服と軟膏では違うという医師もいますが、同じ薬であることには変わりありません。  

実際にアメリカで報告されたのですが、タクロリムス含有剤の軟膏でリンパ腫を起こした例が8例あります。ステロイド剤は20~30年使用され続けていますが、リンパ腫を発症したという報告はありません。しかし、タクロリムス含有剤はまだ使用されるようになって10年に満たないのに、すでに8例の報告があるわけですから、リスクはあると言ってもいいでしょう。  

確かに、副作用があるという証明はまだなされていませんが、逆に副作用がないという証明もされていません。ただし、動物実験ではすでに副作用があることが報告されていることを忘れてはいけません。  

また、タクロリムス含有剤の内服で、IgE値(※2)が上がるという報告があります。これは、アレルギー症状を悪化させるということです。内服も軟膏も成分は同じなわけですから、副作用に関しても同じと考えたほうが安全でしょう。実際に医療の現場にいても、ヘルペスなどの感染症のリスクが高まっていることは、経験的に感じられます。アメリカのFDA(食品医薬品局)では、アトピー性皮膚炎の治療のファーストチョイス(最初の選択肢)にはするべきではないと指摘しています(※3)。  

ご質問のプロトピック軟膏は、ステロイドが効きにくくなったときに使用すると、効果があらわれます。タクロリムス含有剤はステロイドよりも強い免疫抑制効果を持っているので、症状は一時的に改善するはずです。しかし、使用を停止した時には、ステロイドと同様にリバウンドが起こります。  少なくとも、タクロリムス含有剤は、ファーストチョイスは避け、使用前には別の医師とも相談しセカンドオピニオンをとるなど、慎重に対応することをお勧めします。

回答者・医学博士木俣肇
※1 1999年末にアトピー性皮膚炎の新しい塗り薬として新発売された、免疫抑制作用のあるタクロリムスを主成分とした軟膏。現在、ステロイド剤と並んで、アトピー性皮膚炎治療に使われる薬剤として定着している。
※2 アレルゲン(抗原)を攻撃するために、体内に作られる抗体のこと。抗体ができると、再びアレルゲンが体内に入ったときに、アレルギー反応を起こす。
※3 米食品医薬品局(FDA)は、2005年3月、アトピー性皮膚炎治療用軟膏であるプロトピック軟膏(一般名・タクロリムス水和物)について「発がんと関連している恐れがある」として、他の薬が効かない場合に限り短期的に使うよう医師に呼び掛けている。


[column2] 
薬物療法の効果的な活用は

薬物治療にもいくつか利点はあります。
薬物の特徴として「原因がはっきりしているものに対しては効果的」であるということが挙げられます。例えば黄色ブドウ球菌やヘルペスウィルスなどの感染時は、早めに抗生物質や抗ウイルス剤を使用することで、症状の不必要な悪化を効果的に防ぐことができます。

これは、菌やウイルスといった原因がはっきりしているものに対する「攻撃」だからです。 アトピー性皮膚炎の場合も、その「原因」に対する攻撃は行えませんが、「症状」に対する攻撃は行えるため、どうしても症状を抑えたい場合などは、有効に使えるでしょう。 例えば、アレルゲンによるヒスタミン反応によるかゆみを抑えたい(アトピー性皮膚炎を治すのではない)というのであれば、抗ヒスタミン剤を使用すればその目的は達成できます。また、結婚式など、どうしても一時的に症状を落ち着かせなければならないといった時は、症状を抑えることを目的としてステロイド剤を使用することは、本人のQOLを考えると、目的達成のための一つの方法としても価値はあるでしょう。

しかし、いくら目的があるとはいえ、薬剤が持つ副作用は確実に体に影響を与えます。もちろん短期間、あるいは少量であれば、その影響も無視できる軽微な状況かもしれません。しかし、症状が慢性化した場合、漫然と薬剤を使用することは、その使用期間に比例して副作用の危険性が高まることになります。 事実、薬物を使用しても、以前のようにきれいな肌には戻りにくくなったり、薬の効く期間がだんだん短くなってきている方からの相談は多く、そのほとんどの方が副作用によるものと考えられます。

「以前はきれいな肌に戻っていたが、最近は使用してもなんとなく赤黒くなってきた」、「皮膚が硬くなってきた(または薄くなってきた)と感じる」、「痒みや炎症が引きづらくなってきている」、「毎日塗るのが欠かせない」といった方は注意が必要です。 大切なことは、薬物療法の特徴をよく理解し、その効果と危険性を理解したうえで漫然と使用しないことにあります。 同時に、あくまでかゆみや炎症、乾燥という皮膚に現れた状況は「症状」であり、必要以上に過敏に反応させその症状を起こさせている体のシステムを改善することこそが「原因」の解消、つまり根本的な治癒を目指していくために必要であることを理解しなければなりません。

ちなみに、ステロイド剤を使用して症状を抑えながら、その間に生活習慣を変えてアトピー性皮膚炎を治すことができるのか否かについては、新潟大学医学部教授安保徹先生にお聞きした「あとぴナビ2月号特集 私の考えるアトピーの治し方」 をご参考にしてください。

[column3] 
無農薬有機野菜だからといって安全ではない?

最近になって、野菜に含まれる硝酸態窒素の含有量が問題になっています。無農薬有機野菜は健康に良いと考えられていましたが、肥料(有機肥料・化学肥料も含む)を使った栽培では、この硝酸態窒素が厚生労働省の定めた安全基準(300mg/100g)をはるかに超え、それらの野菜がスーパーなどでは並んでいることも多くなりました。見栄えの良いハウスものは基準値の2倍以上の数字を示すものも少なくなく注意が必要です。

この硝酸態窒素の害は子供の突然死に関係があるとする見解やアレルギーの悪化、インスリンの生成を阻害すると指摘している研究者もいます。ちなみに、EUでの、ほうれん草に対する硝酸態窒素の統一基準は250mg/100gであり、これを超える野菜は「汚染野菜」とされています。無農薬・有機農法の野菜だから安全というわけではなくなっているのはここに理由があります。

理想は、現在少数の生産者が実践している、手間ひまかけ丹念に土作りをした「無農薬・無肥料栽培」の野菜を食べることですが、残念ながら流通量も少なく一般家庭の食卓に上ることは難しい状況にあります。

[column4] 
交感神経と副交感神経のバランスを考えた生活改善も大切

自律神経は緊張や興奮に関わる交感神経と、休息やリラックスに関わる副交感神経とがあり、それぞれ「ON」と「OFF」の役割をしています。

したがって、そのバランスが一番大切です。 例えば、仕事や勉強、人間関係などにより、強いストレスを感じるような環境が長く続くと体にも悪影響を与えます。これは交感神経優位の状態を示し、それが過度に行き過ぎると内分泌系や免疫系、血流・新陳代謝機能にまでも悪影響が出ることがわかっています。

この場合はそれらを解消するために副交感神経優位の力(生活習慣や具体的な治療法)を与えることが改善に向けて必要です。アトピー性皮膚炎の方の場合は、この交感神経優位から体のバランスを崩す方が多い傾向にあります。特にステロイド剤を長期間使用している方の場合は、ステロイド剤が興奮や緊張の作用をもたらし、慢性的な交感神経優位な状態を知らず知らず作り上げていることが多いので注意が必要でしょう。

また、それらの交感神経優位な状況による異常状態とは逆に、副交感神経が過度に優位になっていることで皮膚症状(アレルギー症状)の改善がうまく図れない方も見受けます。これは主にステロイド剤の使用を中止している方で、社会生活(仕事・勉強・その他)を一次中断する形で治療に専念して、しかもその期間が長期に及んでいる方に多く見られます。 これらの方の療養生活はどちらかというと副交感神経優位になりすぎる生活習慣が多い(=交感神経を刺激する生活習慣が少なくなってきてる)状況にあります。治療の初期の段階では良かった生活習慣が、その後もずっと良いとは限らないのが人間の体です。全てはバランスが大切なのです。 そのような方の場合には、アルバイトや簡単な仕事に就く、塾に通い始めるなど、社会との接点を積極的に持つことで、交感神経が適度に刺激され自律神経のバランスがとれて症状が良くなることがあります。

また、スポーツも交感神経を働かせるには効果的ですが、社会生活を自分の生活の中に段階的に導入することは、社会の一員である実感、自分への自信などが、自律神経のバランスを始めとする体全体のバランス維持に効果的な場合があります。 長期で療養専念の方は、副交感神経の過剰優位にも注意すべきでしょう。

[column5] 
発汗作用と皮膚改善の関係を探る

体を守る「発汗」はアトピー性皮膚炎を改善するためにも大切

「汗を掻くとかゆくなったり、症状が悪化したりするから」と、入浴や運動を避けているアトピー性皮膚炎の方をたびたび見かけます。

確かに、汗の中には炎症を起こし、かゆみを生じる物質も含まれていますが、続けて汗をかいているうちにそれに慣れてきて、むしろ汗の良い面が出てくるようになります。 逆に、汗をかきにくいことによって、体内に熱がこもりやすくなっていることが、かゆみを悪化させる原因の場合もあります。

人間は体温が上がると汗をかき、汗を蒸発させることで熱を放出します。ところが汗をかきにくいアトピー性皮膚炎の方の場合、毛細血管は皮膚温を下げようと精一杯開いているのに汗をかけないので、体温は上がり肌が赤く見えるようになります。

かゆみの感覚は37度の体温でもっとも敏感になるとされており、発汗機能が低下していると、すみやかに体温が正常域にまで戻りにくいため、かゆみの感受性が高まり症状が悪化してしまうことが多いようです。 また、汗をかかないと、角質層の水分量が不足して、バリア機能が低下し、肌はカサカサになります。そうなることでかゆみの神経線維が角質層まで伸びやすい状態となり、ちょっとした外部刺激に対しても不必要にかゆみを感じ悪化させることにもなります。

少し話がそれますが、カバは赤い汗をかきます。そしてその汗には強い抗菌作用があることがわかっています。人間の汗にも抗菌ペプチドや免疫グロブリンなどの成分が含まれており、これらの作用によって、皮膚に住み着いている善玉菌である常在菌を守り、有害な病原菌の進入を防ぐという働きがあります。

つまり、アトピー性皮膚炎克服のためにも汗をかく体に戻すことが必要だということです。 また、発汗には「代償性」という性質があり、一箇所汗をかかない場所があると、本来かくべき汗の量を他の部分が代償するようにできています。例えば、脇の下で汗をかかない人は、その代わりに背中や腕など、ほかの部分から汗をかくようになるのです。実際の発汗量が少ないのに、自分は汗をかいていると錯覚するのはこのせいです。正常な発汗作用を全身的に回復することも必要です。

以前はアトピー性皮膚炎の発汗機能の低下は、汗腺の異常や炎症などの皮膚ダメージによって発汗ができにくくなるために起きるとされていましたが、最近の研究では、炎症がない皮膚からよりも、炎症などがある皮膚からの発汗量が多いことが明らかになっています。 このことから、アトピー性皮膚炎の方が汗をかきにくいのは、発汗をコントロールする自律神経の異常である可能性が非常に高いことが明らかになりました。したがって、発汗機能の改善には自律神経の改善が大切な要素であることがわかります。

汗の働き

 

第1章 アトピー性皮膚炎が増加し始めた背景
第2章 アトピー性皮膚炎の真の原因を探る
第3章 アトピー性皮膚炎に対する温泉の効果を探る
第4章「温泉湯治」で アトピー性皮膚炎を克服する